(有)白沙堂  
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写経 仏垂般涅槃略説教誡経(別名は仏遺教経)の巻物。
表に水辺に咲く蓮華の絵がある。題字は簡略した文様を墨で描き込んだ紺布に金泥(ほとんど剥落)で「佛遺教経」とある。蓮華の絵は平安時代後期から写経の扉絵や経箱の図様としてまま用いられるが、本図は簡略化がかなり進んでおり、年代の下降するものであることを語る。ごく薄くキララを塗布した本紙に薄墨で罫線を引き、1行17字の文をやや細身の楷書で丁寧に写している。経紙様式・写字の特徴と合わせて、本件は江戸時代を遡り、室町時代と見られる。
仏典に音韻を付けて楽奏・唱和する声明はすでに平安時代からあるが、その音譜に関する資料はきわめて少ない(神奈川称名寺所蔵の応永15年(1406))開版・阿弥陀経に例があるが、希少である)。その音譜を専門用語で博士と言うが、本写経の各字の右側(向かって左側)に見える符号がそれである。この符号は鎌倉時代の文永七年(1270)頃に覚意が創案したという十五折博士に拠ると思われる。符号と経字を見比べていくと、経字の音ではなく、訓に対応していることが「将(マサニ・・・・ス)」の箇所で分かる。経典が漢文であっても、声明は読み下し文で発声していたことを語る。朱字の「色」は能・謡の旋律記号「イロ」と関係すると見られる。
声明の歴史とりわけ和讃の成立・普及(それに当時の言語発声)を研究する上で貴重な資料である。文明18年に三条西実隆が仏遺教経御本に真名を付けて進上したとの記録がある。